― 心臓発作について ―

近年、食生活の欧米化と日本人の長寿化により虚血性心疾患などによる心臓発作による死亡率が高くなってきています。心筋梗塞症に代表される心臓発作では、発作の症状出現後1時間から2時間以内の死亡が大半をしめ、そのため一般住民が心臓発作の症状をよく知り、もしもその症状が出現した時にはすぐに専門病院に来院しなければなりません。また、最悪の場合に心停止に陥りますが、そのときにそばにいる人が心肺蘇生法を適切に施せば助かる可能性が3倍になることも知らしめていかなければなりません。

1. 心臓発作とは

すでに心臓病で治療している人や、まったく健康であった人が突然に強い胸痛や呼吸困難(息苦しい、肩で息する)、激しい動悸(心臓がドキドキ・ドカドカ)が出現することで、さらには血圧低下や心停止で意識を失ってしまうことがあります。

2. 心臓発作を起こす原因

A:心筋梗塞症 
心臓を栄養している冠状動脈の動脈硬化が原因で、急にその血管が閉塞して閉塞部位以下の心筋が壊死してしまう病気で、突然はじまる激烈な前胸部痛で頚部や背部、左肩に痛みが放散することもあります。胸痛は1時間以上続き冷汗や嘔気を伴なうこともあります。致命率が40%もあり早急に救急車で病院へ向かわなければなりません。なぜ救急車かというと発症直後から重篤な不整脈をおこすことが多いためです。前駆症状がまったくない方が多いですが、狭心症が数日先行することもあります。

B:狭心症
冠状動脈が細くなって血流が減少するために、重いものを持った時や坂道・階段を登った時などに胸痛が出現する労作性狭心症と、夜に床の中で明け方の3時とか4時の決まった時間に胸痛が出現する異型狭心症があります。後者は冠動脈の攣縮(けいれん)により起こります。胸痛は10分間くらいで治まります。放散痛もあることが多いです。はじめての狭心症は症状がおさまるかどうかはわからないので、心筋梗塞症と区別がつきません。狭心症の発作中にも不整脈が起き易く、発作が起きないように治療しなければなりません。

C:うっ血性心不全 
心臓の働きが低下して肺に水分が溜まって呼吸が苦しくなる状態のことです。血液中の酸素濃度が低下して重篤だと心停止になります。夜間に横になっていると胸が苦しくて起き上がると改善する、いつもの坂道が息切れや動悸で辛い、足や顔がむくんで体重が増加した、などのときは心不全を疑わなければいけません。心不全を来たす原因は、@高血圧性心肥大A心臓弁膜症B心筋梗塞の既往C拡張型心筋症などですが、救急外来を受診する心不全患者の半数は心疾患を指摘されたことのない方々です。

D:不整脈 
心拍動が速くなる不整脈とゆっくりで数秒停止するような不整脈があります。突然はじまる速いドカドカ・ドキドキが急によくなるタイプのものには、発作性上室性頻拍症と心房細動などがあります。前者はWPW症候群に合併することもあります。後者は肺疾患や甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、心臓弁膜症に合併することが多く、脳梗塞の大きなリスクになります。時々ドカッとかドキッと脈がとぶものには心室性期外収縮と上室性期外収縮がありますが、基礎心疾患がなく自覚症状がない人は薬を服用せずに経過をみることになりますが、期外収縮の発生頻度や基礎疾患の検査が必要です。ゆっくりタイプの不整脈の症状はふらつき、だるさ、意識消失などで、必要ならペースメーカーを植え込まなければならないこともあります。

3. 心臓発作を起こさないために

   予防
 一般的にはいわゆる生活習慣病の予防と同じです。糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満症、高尿酸血症、喫煙は心臓病のリスクファクターです。ストレスがたまらないようにすることも大事です。治療が必要な方は「かかりつけ医」に相談するのがよいでしょう。
   検査
 心電図、レントゲン、血液検査のほかに必要な方には24時間心電図、心エコー検査、運動負荷心電図を行います。虚血性心臓病であれば大病院で心臓カテーテル検査をすすめることもあります。
   治療
 基本的には薬物療法ですが、重症のときはカテーテルで冠動脈を広げたりバイパス手術、弁置換術などの手術を行うことがあります。

   4.おわりに
人間それぞれ生活の質についての考え方はさまざまです。食事や運動などの摂生を強要することはできません。また、ありとあらゆることに気を付けても避けられない病気や事故に遭うことも事実です。筆者は1994年以来、心肺蘇生法普及に携わってきた経緯があり、もしも隣で倒れた人がいれば、そしてその人を助けたいと思ったら、すぐに声をかけて救急車を呼び、必要なら人工呼吸と心臓マッサージをしていただければ、世の中さらに明るくよくなると確信しております。心肺蘇生法は最寄の消防署に連絡をとっていただけば講習会を開くことができます。